収録作品:初出誌 | 小説現代 1993年4月号 |
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著者のつぶやき
名探偵 皆を集めて さてと言い
というよく知られた戯れ歌があります。探偵小説のクライマックスを見事に言い表した句です。探偵小説、ミステリー、推理小説……似たようなジャンルの名前が並んでいますが、これらの小説は、最後に華麗な謎解きのシーンを持っています。真相は、実はこうだったのだ! もちろん楽しいし、僕も大好きなのですが、でも、なんだか違うものが書きたくて仕方ありませんでした。
だって、名探偵の推理がいつも正しいなんて、おかしなことでしょう。いかにそれが理路整然と語られる名推理だったとしても、現実の世界に置き換えると、穴だらけです。
だから、間違った名推理を楽しむ小説というのは、どうだろうと考えたのです。名探偵の華麗な推理とは、いくつかの条件を満たす世界の中でだけ威力を持つものだということを、自分でも検証してみたいと思いました。
このシリーズは、そういう意図を持って書いたものです。