初出誌・小説すばる |
2003年11月号 |
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著者のつぶやき
鼠小僧次郎吉のような〈義賊〉には、どこか魅力があります。やっていることは犯罪ですし、許されるものではありません。相手が厭な奴だからといって、痛めつけてやっていい道理など、本来はないのです。でも、自分とは無関係なところで義賊が活躍してくれると、なんだかワクワクしてしまうのですね。
そんな〈義賊〉の登場する小説を書いてみたいと思いました。
一方で、それを小説すばるで書かせてもらうことが1つのヒントを僕に与えてくれました。この雑誌で前に書いた『風が吹いたら桶屋がもうかる』は〈役に立たない超能力者〉の話でもありました。ですから、今度はその逆、〈役に立つニセ霊能者〉というのを描いてみようかと考えたのです。
2003年の終わりごろから2005年の中頃まで不定期に8回の連載をしました。驚いたのは、単行本として出版された後、この『the TEAM』が、静岡県の中学校で2006年度の冬休み推薦図書に選んでいただいたと聞かされたときです。だって、犯罪者たちを主人公にした小説ですよ。推薦って……。
さらに2012年には、啓文堂書店が毎年行なっている啓文堂大賞の文庫部門で『the TEAM』を大賞に選んでいただきました。これは各出版社と啓文堂書店の担当者が各部門で推薦選定した10~15 作品の候補作を、啓文堂書店全店で「候補作フェア」として 1 ヵ月間販売し、その中で最も売り上げの多かった作品を大賞受賞作にしていただけるのです。いわば、読者賞です。小説家にとってみれば、ある意味これは、もっとも栄誉あることだと、大喜びしました。